見坊

今度の辞書の特色は、非常に多いと思いますけれども、私の興味で申し上げれば、語源説ですね、これは実にいいです。最初の話では、なにかあのなかから妥当なものを選ぶなんていう話も、ちょっと出たんですけれども……

司会

ええ、見坊先生にやっていただこうということだったんですけれども……(笑)

見坊

しかし私なんか、読者の立場から言うと、「名語記」ではこんなことを言ってるとか、だれはこう言ってるとかいうふうなことのエッセンスがあすこでわかるということは、非常に興味がありますね。たいていたくさんの説があれば、どれか一つが正しくて、あとはみんなだめなんでしょうけれども、だめなものでもだめなものなりに、考え方の筋道とかなんかがわかって、そのことばに対する反省の仕方とか角度とかそういうふうなものがわかって、あれは非常によかったと思いますね。

司会

典拠を入れたのがよかったですね。

見坊

そうです、そうです。ことに最近の学者の説まで引いてありますわね。だれそれさんのなんという論だとか、そんなのまであるから、なかなかよく見てるなと思って、感心してますけれども。

司会

かなり牽強付会なのが入っているわけですけれども……

山田

それはそれでいいんです。

司会

特色で言いますと、発音をこういう辞書に入れていただいた……

見坊

あれは進歩ですね。一大進歩です。しかも、東京のアクセントと京都のアクセントと両方出してるところが……

山田

まあはじめてじゃないけれども、かなり詳密で、しかも歴史的なものをなにしてる。

見坊

発音の歴史、アクセントの歴史まで出したのは、今度の辞書がはじめてでしょう。

司会

方言も、大辞典なんか別個にあげてるわけですけれども、今度一般語と合わせるということをやりましたね。かなり最初、冒険だという感じがしましたし、委員会でも議論になったわけですけれども、あれは結果的に見て、よかったんじゃないでしょうか。

松井

関連が非常にわかるのがありますからね。

見坊
初版の組版に使用した活字ケース

方言で思い出しましたが、私の知っている東京育ちのご婦人が、「あまめ」ということばを使うんですよ。こたつなんかに長くあたって、炭火にあぶられると、足にあまめができるというんですが、僕は知らないんです、あまめなんて。それ、なんだと言ったら、これこれこういうことだと。私だったら、火だこと言うんですよね。それで、どうも私の勘では、方言なんですよね。それで、そちらの編集部に、私電話をかけて、あまめということばについて、どういうふうに書いてあるかということを質問したら、非常に詳しく教えていただきましてね。その意味から、あまめということばの使用地域の分布、そういうふうなものまで、方言辞典よりも詳しく書いてあって、僕は驚いたことがありましたが、それで疑問がわかったんですけれども、なんかそのご婦人のお母さんが、九州で育った関係で、九州弁が断片的に入ってきたんですね。そういうことがわかりまして、非常に役に立つ辞書だなと思ったことがあります。


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