司会

今度の場合、特別部会なり十いくつかの部会で集めた用例カードが、作業の過程でDカードというふうに称していたわけですけれども、そのDと名前がつきますのは、AからNまで九種類、執筆のための資料を用意したうちの一つというわけです。その資料のために、大きさも違うし、印刷の中身も違う三十種類くらいの基礎カードを用いています。それから大日本国語辞典をはじめ、先行する辞書の参考資料を貼りこむと。

一覧表ですね。

司会

その一覧表を作るために、足掛け四年かかっています。休みをねらって学生さんを三クラスぐらい動員してやったわけです。

見坊

四年間でやったというのは、スピードが早いですね。

松井

今度の場合は、見出しが歴史的仮名づかいで配列してある辞書と、現代仮名づかいで配列してあるものと、それから発音式で配列してあるものと、だから同じ紙に同じことを貼らなきゃならないですね。そうすると、順番を変えなきゃならないわけです。それが非常にたいへんだったです。

あれは大事業なんですよ、貼りこみは。計画的にいろいろ工夫してやったですね。

山田

四年では早い。それは用例を実際にとるときに、いっしょに並行してやったの。

司会

並行してやっておりました。

見坊

あれは財産ですよね。貼りこんだということね。大きい資料になってる。

司会

それから、注釈書の頭注とか脚注のたぐいを貼りこんだのも、大きい資料になってるわけです……

見坊

それは別のカードに貼ってあるわけですか。

司会

ええ、別なカードです。最初、小さいカードに貼りまして、それを語毎に大きな台紙に貼っていくという作業をしたわけです。あるいは個人全集、西鶴全集とか漱石・鴎外なんかもやりましたね。そういう注釈書のたぐいを貼りこんだのも、さっきのAからNまでに配置したわけです。あと、参照文献カードというのがあります。これは、松井先生の勤めていらっしゃった武蔵学園の先生方にご苦労いただいたわけですけれども、これも五、六年かかってますね。

初版を編集した「日本大辞典刊行会」スタッフ
松井

参照文献カードは国会図書館に通ったんです、みんなで。それで、実際にはなかなか生かされなかったんですが、大学の紀要類を、あすこにある限りのものを引張り出して、解釈や用例の参考になるのをみんな書きだしまして、カードにしたんです。

司会

資料集めの段階から国語、国文学の世界ばかりでなくて、歴史とか仏教とかの分野の方にも参画していただきましたので、そういう分野での読みについていろんな面白いことがありましたですね。つき合わせてみると、実は同じことばなんだけれども、歴史のほうではこう読んでるとか、あるいはどちらかが間違っていたとか……

あと、資料で言いますと、索引チェックというのがありまして、編集の過程で次々に索引類が出ましてね、それを追っかけるのに苦労しました。

松井

それから台紙になる前、同じことばであるのか違うことばであるのかという判別をする作業というのは、これまたずいぶん長く、これは先生をだいぶ呼んできて、社に詰めていただいて、それでカードを合わせ、貼った台紙を合わせるという作業、これはたいへんだったですね。

それで、いまの索引やなんかができたとかいうことも、われわれやってる間にどんどん発展した仕事でしょう。それと同様に、もうひとつ、資料のほうね。用例を採集する資料そのものも、最初のうちは活版本ぐらいでやってたものが、だんだんだんだんいい資料が複製されたり、またいい資料が発見されたりということがあったわけでしょう。だいたい岩波の「古典大系」だって、あれが中途でできたから、われわれに非常に影響を与えたし、あれで振り回されたところもあるわけですよ。

松井

現代部会で、はじめは明治二十年で切ろうと言ってたんですね。それが、明治の末までにしようといって、大正にしようといって、文庫本をある程度拾って、それで戦後までいっちゃった。

山田

なんぼぐらいあるんですか、見出しを拾ったのは。


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