子供のころに、「テブクロの反対は何だ」と言って、ロクブテと答えさせ、相手を六つたたく遊びをなさったかたが多いと思います。ある時期の子供は、言葉をさかさに読むことに興味を持つもので、電車に乗っていると、停車するごとにシバンシ・ワガナシなどと、駅名をさかさに読んで遊びます。
わたくしが小学一年生のときに、みんなで、タデ、タデ、ガキツ。イルアマ、イルアマ、イルマンマ、ンボ、ノ、ナウヤ、ガキツ。と歌っていた記憶があります。
明治四十三年に創刊した雑誌『白樺』の同人である武者小路実篤が、大正五年に次のように書いています。
白樺を出したとき、新潮の六号で、アホダラ経まがひにバカラシといってからかはれた。バカラシの反対がシラカバだ。しかし、そんな語呂合せが何にもならないことはわかってゐる。ともかく軽蔑されてきたことはたしかだ。
雑感
楽天的とも言える人生観を嘲笑されたのを憤ったのです。
これに関連して、長野県には、用途のない白樺の木をバカラシと罵るかたもあると聞きました。
第二次大戦まで、東京の上野池の端仲町に、「たしがらや」という小間物屋があったそうです。森鴎外が明治四十四年から大正二年にかけて発表した『雁』(拾参)に、
たしがらや倒さに読めば「やらかした」と、何者かの言ひ出した、珍しい屋号の此店には、
という一節があります。
以下の引用文では、該当する語を目立つようにカタカナで表記します。なお、「さかさことば」は平仮名が続いて読みにくいので、多く倒語という語を用いることにします。