日本語のアナグラムとしては、いろは歌の文字の並べ換えがいろいろと試みられています。全部の仮名を一度ずつ用いる歌は、創作意欲をそそるものだったのでしょう。
まず元になるいろは歌を掲げておきます。
色(いろ)は匂(にほ)へど散(ち)りぬるを、我(わ)が世(よ)誰(たれ)ぞ常(つね)ならむ。有為(うゐ)の奥山(おくやま)今日(けふ)越(こ)えて、浅(あさ)き夢(ゆめ)見(み)じ酔(ゑ)ひもせず。
いろは歌は、古くから空海作と言われていますが、音韻史の立場からは、空海の時代には、ア行のエ(e)とヤ行のエ(ye)とは別の音であり、コも二種あったのに、いろは歌にはそれが反映していないことで、また歌謡史の立場からは、七五が四句の今様体の歌はまだ行われていないということで、空海作は否定されていて、平安中期に韻学の世界で作られたとのであろうというのが通説です。空海作とされたのは、いろは歌が『涅槃経』の偈(げ)「諸行無常、是生滅法、生滅滅已、寂滅為楽(諸行無常は、是れ生滅の法なり。生滅滅し已(をは)りて、寂滅を楽と為す。)」の意を表したものとされているからでしょう。